私がまだ若かりしころの、忘れられないクリスマスの思い出話です。
ドキッ!おじさんだらけのプレゼント交換会
「今年のクリスマスは、みんなでプレゼント交換をやらないか?」
クリスマスが迫ったある日。私が所属していた社会人サークルの集まりで、リーダー格のおっさんが言いだしました。
「お、そういうイベントやるのもいいね。やろうやろう!」
他のメンバーも賛同します。
しかし、そのサークルの平均年齢は40代くらいで、20代は私を含め数名という構成。しかもほぼ全員が男性というメンバーです。
おじさん同士でプレゼント交換会??
「ちょっと待って、みんな。冷静にお互いの顔を見て。おっさん達だけでプレゼント交換をして何が楽しいの?」
という私の発言は、あくまで心の声。当時若造だった私に発言権などありません。
「じゃ、予算はだいたい2,000円前後にしよう。次回の会合でみんなひとつずつ持ってくること。」
おじさんが喜ぶプレゼントって?
やると決まったからには仕方がない。プレゼント選びです。
「クリスマスにおっさんのためのプレゼントを悩むとは、俺はいったい何をやっているんだろう。」と思いつつも、やるからには、ちゃんと選ばないと・・・。
ささやかなプレゼントといえば、基本は「自分で買うことはないけども、もらえるとうれしいもの」です。
プレゼントを後々とっておかれるのもなんだし、相手にとっても邪魔になるかもしれないので、できれば消えものが望ましいかも。
「よし、これだ!」
私が思いついたのは、栄養ドリンク
当時は若者向けのエナジードリンクなんてもちろんなく、栄養ドリンクといえば、まさにおじさん専売特許の飲み物。
高価なドリンクは、それなりに効き目があるかもしれないけど、高いのを買うには奮発しないといけないからちょっとハードルがあります。消えものだし、まさにベストチョイス。
私は、薬局でユンケルの高いのを1本買って、それを丁寧にラッピングしました。
「われながら、なかなかいいセンスだ。」
運命のプレゼント交換会
プレゼント交換の日がやってきます。
前代未聞のおじさんだらけのプレゼント交換会ですが、参加メンバーという点を除けば、普通のプレゼント交換です。
テーブルのうえに山にしたプレゼントから、順番にクジをひいていき、該当する番号のものを受け取っていきます。
なんとなく年長者からクジを引いていく流れで、プレゼントを受け取ったらその場で開封してお披露目です。
「お、LAMYのサファリだ。なかなかいいじゃないか。」
「アロマソープ!こんな女子っぽいもの、誰だ?」
「へへへ、俺ですよ。プレゼント交換とといえばこういうもんでしょ。」
おじさんばかりのさみしいイベントなんて、当然シラケるだろうと思いきや、なかなかの盛り上がり。こんなイベントもたまにはいいかもと、私も楽しくなってきました。
しかし、プレゼントがどんどん配られて減っていくうちに、私は大きな誤算があったことに気がついたのです・・・。
ユンケル君の悲しい運命
私の誤算は、「おじさんだらけのプレゼント交換会は、おじさんだけのプレゼント交換会ではなかった」ということ。
参加メンバーのなかに、おじさんとは対極の若い女性が一人いたことを、私はすっかり忘れていました。
その子は最年少ということもあり、遠慮気味でクジを引く気配もありません。
おじさんに対しては自画自賛のプレゼントですが、もし女性に当たったとしたら、精力アップのドリンク剤なんて、常識はずれのありえないプレゼント。
「だれかひいてくれ・・・お願い。」
テーブルの上のプレゼントが減っていくにつれ、私の心の叫びは悲鳴にかわっていきます。
しかしながら、運命は残酷です。私のプレゼントは、おじさん連中はなぜかスルーしていきます。
そして、テーブルの上には私のプレゼントだけが残り、そして彼女もクジをひかずに残っていました。
「残りものには福があるってことで、さぁ、あけてあけて。」
「あ、細長い箱が入っている。なんだろう・・・!!!」
その子は絶句。「こんなプレゼント選んだのは誰だ?」と、みんなは大爆笑。私は生まれてこの方ないくらい、小さくなっていました。
プレゼント交換会としては、最後に私が全部もっていったオチのせいもあり、大盛況となりました。
彼女は一応プレンゼントなので、ユンケルを家に持ち帰ることに。
「年頃の娘がクリスマスに男性からもらったプレゼントが、なんとユンケル!」と、家庭でも冷ややかな笑いを提供。
高級なユンケルは、家庭でしばらくさらし者になったあと、誰にも元気を与えることなく賞味期限切れ。ほこりをかぶってゴミ箱行きとなったそうです。
後日談〜初めてもらったプレゼントは?
さて、役目を果たすことができなかったユンケル君の運命を、私がそんなに詳しく知っているのか。
それは、その時の女性が、のちの私の妻だから。
もちろん、ドリンクをもらったときにビビっときたわけでもなんでもなく、「こんなプレゼント持ってくるなんてキモイやつ」という認識。私の方は平謝り。
ただ、お互いにまったく眼中になかったところ、大幅なマイナスながら、お互いに相手のことを強烈に認識する出来事でした。
このプレゼント交換がなければ、相手を認識することなかったかもしれないので、もしかしたら運命をわけたイベントだったかも。
さらに、このプレゼント交換から、妻に頭があがらない私の運命がスタートしたのかもしれません・・・。