2017年11月の発売から47万部のベストセラーになっている、橘玲さんの「専業主婦は2億円損をする」。
この本のKindle版が、発売から3カ月しかたっていないのに、1月9日まで無料でダウンロードできるキャンペーンを実施していました。
売れている本なのにどうして無料化したの?無料キャンペーンの経緯
もともと歯に衣を着せぬスタイルの人なので、従来から割と批判が多いのですが、今回の「2億円は」かなり批判が多く炎上気味のよう。
特に「読まずに批判する人が多い」ということで、無料化に踏み切ったということのようです。
『専業主婦は2億円損をする』が、1月9日までkindle で無料で読めます。 https://t.co/XrDsdesQjv Yahoo newsなどで本が紹介されるたびに、読んでいない方からの批判が殺到するので、出版社さんが無料化に踏み切りました。私としてもできるだけ多くのひとに読んでほしいので、拡散していただければ。
— 橘 玲 (@ak_tch) 2017年12月27日
なんせ、タイトルとキャッチコピーが挑戦的。
「専業主婦は2億円をドブに捨てている」とは、なかなか過激な表現ですね。
そして2億円という金額のインパクト。
「生涯働いて2億円手取りで稼げる人なんていない!」という批判が多いようです。
この2億円、大卒女性の平均生涯賃金から退職金を除いた水準ということのようですが・・・。
例え収入が2億円あっても、税金コストや、保育料のような家事育児アウトソースコスト、専業主婦の優遇の喪失など、機会損失は、新たに発生する費用や受益できなくなる便益を控除して評価するのが常識です。橘氏らしかなぬと思っていましたが、後に「2億円のタイトルは出版社の意向で決めました」と橘氏もポロっと述べていました。
このタイトルには、出版社側の売るためのインパクト狙いが多分にあったかもしれませんね。
本文については、この手のビジネス書にありがちな煽りや誇大表現もなく、至って冷静な論理展開がされているため、読まずにタイトルで批判する人がいるのは確かに残念かも。
「2億円なんて盛りすぎたタイトルを無理矢理つけたから、内容に関係ない批判がきているじゃないか!」作者自身のクレームで、売れている本を一時無償化する、出版社側としては異例の扱いに踏み切ったのではと勝手に推察しています。
どんな本?「専業主婦は2億円損をする」の内容
「働く女だけが、お金も恋愛も自由も手に入れる」ということで、専業主婦のデメリットと働く女性のメリットについて論じられた本です。
プロローグではこんな専業主婦批判からはじまります。この時点で全国700万人の専業主婦を敵に回しそうですが・・・。
- 専業主婦はお金がない
- 専業主婦は自由がない
- 専業主婦は自己実現できない
- 専業主婦はカッコ悪い
- 専業主婦になりたい女子は賢い女子に選ばれない
- 専業主婦には"愛"がない
- 専業主婦の子育ては報われない
- 専業主婦は幸福になれない
- 専業主婦は最貧困のリスクが高い
かなり乱暴な表現ではありますが、これらの論拠について、後段で丁寧に説明しています。
海外には存在しない日本固有の専業主婦という職業。そしてそのステータスが失われてきているなか、女性がどう生きるべきかがテーマになっています。
この本のメインターゲットは若い女性、「賢いJK(女子高生)から二十代の女性」ということで、書店では女性のライフスタイルの棚に並んでいました。
女性ライフスタイルというと、「愛され女子になる!」「引き寄せの法則でハッピーライフ」「願いは絶対かなう」のようなポジティブタイトルの本ばかり。
そんな女性向けの本に混ざって「2億円損をする」のネガティブタイトル。これまた悪目立ちしています。まぁ、これもまた販売戦略でしょうね。
逆に「仕事をすれば2億円得をする」というポジティブタイトルだと、「んなわけないでしょ」と一笑に付され、ここまで話題にならなかったかも。
読み手の気持ちに寄り添うよりも、合理性の観点から鋭く切り込む論法の橘氏は、比較的男性が好む作家かなと思います。ただ、今回のこの本は若い女性読者をターゲットにしているということで、より丁寧で平易な文章になっており、とても読みやすいです。
以前に橘さんの本を薦めても読まなかったうちの妻にも好評でした。まぁ「仕事を続けたいのに社会から退職を突き付けられている」という、今の事情も多分にありますが・・・。
どんな本を書いている人?橘玲さんのおすすめの本
橘玲さんの本は好き嫌いがかなり分かれると思いますが、私は大好きなので、昔からいろいろ読んでいます。歪んだ世の中で、社会のルールを知って賢く生きるための示唆に富んだ作品が多いです。
マネーロンダリング
デビュー作は金融小説「マネーロンダリング」です。
50億円の資金をもって消えた美女と、その金を追うヤクザ。それに巻き込まれて真相を追うファイナンシャルアドバイザーである主人公。日本と香港が舞台の金融サスペンスです。
金融について熟知した筆者ならではの視点で、金融や税制の仕組みにも踏み込んだ内容。大金に人生を翻弄される登場人物たちの描写もイキイキとしています。半沢直樹で有名な池井戸潤さんとは別タイプの金融小説として楽しめると思います。
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/04/15
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お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方
マネーロンダリングの後に出されベストセラーになった「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」。2015年に全面改定されました。
経済的独立を達成するための効率的な人生設計についての本。私は同じく話題になった「金持ち父さん」より断然こちらが好きです。
資産形成を
(収入―支出)+(資産×運用利回り)
というシンプルな公式に当てはめ、
- 収入を増やす
- 支出を減らす
- 運用利回りを上げる
という切り口で分かりやすく解説。不動産や生命保険の常識にも反論しつつ、いかに賢く資産形成すべきかについて論じています。
新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/08/04
- メディア: 文庫
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臆病者のための株入門
株式投資の入門書としておすすめしたい「臆病者のための株入門」。パッシブ運用、分散投資からファイナンス理論の基礎について述べています。
世の中の金融商品がいかに役立たずなものなのか、経済学的に正しい投資方法は何なのか、どう橘流で論じています。
この本に心酔した私は、自分の確定拠出年金で実験してみようと、9割外国株のこの本でいう世界ポートフォリオに近い形にしてみました。
(実際は他の円貸資産があるなかの9割はあまり意味はないのですが…)
結果論にすぎませんが、その後円安と米国株高もあり、5年で年金資産は倍増するという好結果。
一方で個別に銘柄を調べて売り買いしてきた株式投資は50%増くらいだったので、実質何もしなくてこのパフォーマンスとは、なかなかのものです。
まぁ、橘さんに言わせれば「株式投資は資金効率の良いギャンブル」なので、個別銘柄への株式投資もギャンブルとしては楽しんだというところでしょうか。
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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言ってはいけない 残酷すぎる真実
近年で話題になったのが「言ってはいけない 残酷すぎる真実」。世の中には後天的な努力より先天的に決まることが多いという「不都合な真実」をテーマにした本です。個人的には「専業主婦は2億円損をする」よりもこちらの方が内容は辛辣だとは思います。
- 知能は遺伝する~子どもの成績が悪いのは親が馬鹿だから
- 知能の差が収入の差になる
- 美人と不美人では3,600万円の収入格差がある
確かに身も蓋もない話ばかり。人によっては、不愉快に思うかもしれませんが、このように普通は目を背けている話題に真っ向から挑んでいくスタイルは好きです。
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/04/15
- メディア: 新書
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まずは1月9日までにダウンロードを急げ‼
「専業主婦は2億円損をする」は1月9日までにダウンロードできた方は、2月9日までは読めるようです。
KINDLE端末を持っていなくても大丈夫。無料のPC版KINDLEアプリやスマホで読むという手段もありますよ。
Kindle for PC (Windows) [ダウンロード]
- 出版社/メーカー: Amazon.com Int'l Sales, Inc.
- 発売日: 2015/07/17
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少子高齢化が急速に進むなか、政策主導で女性の社会進出を強力に後押ししなければ、いよいよ日本の社会が立ち行かない状況にまでなってきています。
税制面でも専業主婦優遇がどんどん縮小されてきていますが、「専業主婦」という選択は、今後どんどん社会的に厳しくなっていくと思われます。
そんな日本の社会の未来予想図を示しているともいえるこの本は、女性のみならず男性も読む価値が十分あると思います。
話題の本がリアルタイムに無料で読める機会なんて、なかなかありません。1月9日までにダウンロードできなかった人は残念でしたが、有料でも読む価値ある本だと思いますよ。
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2017/11/17
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