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再エネ開発もなかなかつらいよ。再生可能エネルギー発電所建設の課題。

再エネは主力電源になれるのか。

政府の「エネルギー基本計画」が今月にも閣議決定される見通しです。 

震災以降、これまでは原発の扱いばかりが争点となってきましたが、今回その議論はいったん棚上げし、風力や太陽光などの「再生可能エネルギー」を主力電源に位置付けることがテーマとなるようです。

「大事な議論を棚上げするのかよ」という声もありますが「とにかく脱原発」というよりは、代替策の実現性を考えてから原発との向き合い方を決めるというのは、個人的には現実的な議論なのかなと思います。 

持続可能なクリーンで安全、低コストな代替エネルギーが実現できれば、エネルギー問題は解決するわけです。

ただ、再エネ発電所の開発を手がけている人と話をしてみると、再生可能エネルギーを主力電源にするにはいろいろハードルがあるとのこと。

「再エネ拡大とみんな好き放題言うけれど、コンビニで買ってくるように発電所は作れないんだよね‥。」

再生可能エネルギーを増やすといってもそうは単純にはいかないようです。

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水力発電を作れと言われてもどこに作るの?山壊していいの?

河川やダムからの水が流れる力を利用して電気を起こす水力発電。自然に恵まれる日本が昔から活用してきた電源です。

水力発電は技術的にも成熟していて、再生可能エネルギーの老舗といってもいいでしょう。

ただ、水力発電は大規模な工事規模の割に発電出力が出ないのがデメリット。大規模な発電所を作るには、山ひとつ壊し、村ひとつ沈めるくらいの自然や街を破壊が必要となります。『村1つ沈めてダムを…』という大規模開発は高度成長期の何でもありな時代なら許されたでしょうが、今日日非現実的です。

また、古くから利用されてきただけあって、主要な地点はすでに開発されてしまっています。 

結果して、誰も足を踏み入れたことのない山奥の小さな川に、資材を運ぶための道路からつくりにいくという開発。なかなかコスト面でペイできません

そして水力発電で難しいのは水利権。「水の一滴は血の一滴」と言われるように、特に農業にとって水は重要。「水を発電に使われたら使えなくなるじゃないか」という地元の反対で計画が頓挫することも多いようです。

彼の会社では、「新たに開発できそうな地点を見つけてくること」これだけでも成果になるらしいとか。水力発電所に関しては、これから増やそうと思っても開発できる地点がなかなかないのが一番の課題のようです。

 

f:id:bg4kids:20180608061948j:plain風力は迷惑施設なんだよね。人も鳥も住んでない場所なんてないでしょ。

風の力で電気を起こす風力発電。海外ではかなり主力な電源ですが、狭い国土の日本においては、風車を設置できる風況豊かな土地はなかなかない。

結果して、山あいや海辺の辺鄙な地域建設されることが多いわけですが、人が住んでいないそんな土地は動物の天国です。

風力発電は鳥の天敵。風力のブレードに鳥が衝突するバードストライクという事故でたくさんの鳥が命を落とすそうです。特にタカなどの稀少な猛禽類にとってはバードストライクが生態系を揺るがす深刻な問題となっています。

一方で、人が住んでいる場所だと野鳥は少ないので、排ガスも出ない風力なら多少人が住んでいる場所にという選択もあります。しかし、風力発電はアルプスの少女ハイジに出てくる風車とはちがい、高速で回るブレードがブンブンとブレード音がものすごい

私も一度近くに行ったことがありますが、近くではとても住む気にはなりません。風車の低周波音による健康被害も発生するようで、住民には迷惑施設にほかならないようです。

「いい場所見つけても、猛禽類の生息調査をするとほとんどアウトなんだよね。人も鳥も住んでない土地なんてなかなかないよね。」

うまく立地が成功した地域には風車が立ち並んでいますが、さらにこれ以上となると、洋上風力などの技術が確立すれば別ですが、風車の設置に向いている土地を探すのは至難のワザのようです。

 

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バイオマスは燃料をどうするの?途上国の森林からじゃないの? 

化石燃料の代わりにゴミや間伐材の木質チップ、汚泥などを燃やすバイオマス発電。不要なものを燃やしてエネルギーを得るわけですから、エコだと言われています。

ただ、火力発電と同じで燃やすエネルギーで発電するわけですから基本燃料が必要です。ゴミ焼却場のように付帯で発電する設備はいいけれど、その他は常に専用の燃料を確保する問題がついてまわります。

「発電所を建てたら撤退が難しいのをいいことに、燃料をふっかけるやつらもいるんだよね。」

彼が過去に手がけたもみ殻やヤシ殻を利用したバイオマス発電所では、燃料が高騰し発電所の閉鎖に追いこまれたことがあったとか。国内のバイオマス発電所でも、収入側は買取制度で固定価格なのに、費用側は相場で変動する燃料費という収支構造上の問題があるようです。

バイオマス発電所もたくさん建設されてきた結果、国産の間伐材のチップなどは価格が高止まり。コスト面と安定的な燃料供給の観点から、最近では海外から木質チップなどを輸入する発電所も多いとのこと。

特に途上国では日本のような厳格な森林管理がされていません。輸入している木質チップは、果たして間伐材のような不要品なのか…。日本でのクリーンな発電のために、海外の森林が伐採されていくのではという闇の問題もあるようです。

 

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自然を破壊して太陽光パネルを置く業者にはなりたくないよ。

私たちに一番なじみがありのは、住宅でも利用される太陽光発電。ボイラーやタービンのような設備が不要で、基本パネルをおける場所さえあればよいので、様々な企業が参入しています。

ビジネスとして太陽光を利用するためには、パネルを置いて光が当たる広い土地が必要です。

市街地は日陰になる建物があるので、大規模開発をする場合には田舎になるわけですが、広く空いている土地はなかなかありません。結果して、山林や休耕地を買い取りそこにパネルが置かれることになります。雑木林を伐採し、パネルを敷き詰める。自然エネルギーのための自然破壊が行われるわけです。パネルが敷き詰められて、緑の景色が失われた場所もすでに多いですね。

太陽光は大手電力会社や商社、地方自治体から海外企業までいろいろな企業が参入しています。なかには利益第一の悪質な業者も多いから、規制が緩い小規模の発電所を乱立させ、基礎をしっかり作らず鉄パイプやドラム缶のようなもので設置しているところも。台風や地震で容易に崩壊しそうな設備もあるとか。

「買取制度が終わる20年後までには、全部がれきの山になっているんじゃないの?20年後どうするんだろうね。俺はそんな悪徳業者と一緒にされたくないよ。」

日光が当たればよく、開発地点の可能性や設備構造のシンプルさから、ポテンシャルが一番大きいのが太陽光です。ただ今はいろいろな参入者が増えて悪徳業者も多い。開発もエンジニアリングというよりも不動産買収に近いところも多いとか。

彼はその有象無象の中に入っていく気はないとのことです。

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地熱発電は温泉街との共存関係が鍵。

彼が最近手がけているのは、地熱を利用する地熱発電。火山国である日本の地の利を活用した発電というわけです。

ただ、地熱を古くから利用方法といえば、温泉です。地熱が利用できる地域は、たいてい温泉街ができています。

温泉街は地熱で温められる温泉によって生かされている。そんな大事な地熱をおいそれと発電に使わせてはくれません。

発電所の建設にあたっては、そんな地域の新参者として地元に受け入れてもらうことが必要です。

彼はひなびた温泉街に滞在するようになってはや1年あまり。調査や測量などもありますが、メインの仕事は地域とのコミュニケーション。ようやく地元の祭りなどにも参加させてもらえるようになり、よそ者に対する警戒感が緩んできたところだそうです。

「土地を札束で買うのが発電所の立地じゃない。信頼獲得に近道なんてないんだよな。今日も村の寄り合いで呑んでくるわ。」発電所ができても、雇用がたいして増えるわけでもなし。地域の理解をえるための活動は、地道で大変のようです。

 新しい地熱発電の開発の話はあまり聞きませんが、やはり立地の難しさがあるんでしょうね。

再エネが主力電源になる道にはコスト負担問題は避けては通れない。

近年急速に普及が進んできた再生可能エネルギーですが、その原動力はFITと呼ばれる固定価格買取制度のおかげ。火力発電よりも高い価格で買い取ってくれるから、開発コストが高くてもペイできるというわけです。

この固定価格買取制度の原資はというと私たちの電気料金です。「再エネ賦課金」という名目でわたしたちの電気料金に上乗せされています。

再エネ賦課金の額は毎年増加しています。発電設備の買取単価は年々下がっていますが、数が増えているわけです。2018年度は一般家庭で年間9,000円程度。生活必需品の電気に課金される拒否できない費用。隠れた消費税のようなもんですね。

中国資本が土地を買収して中国製のパネルを設置するケースでは、電気料金で利益補填をしてさらに富が国外に流出し、国内は潤わなという話も。

脱原発を宣言して再エネ拡大に取り組んでいる再エネ先進国ドイツでは、この再エネ負担額が年間30,000円を超えるとか。

ドイツは隣国フランスから原子力発電の電気を買ったり、国内再エネで出てきた余剰電力を周辺国に売ったりという調整もしている。自前でやりくりしないといけない島国の日本の再エネがドイツレベルのになったら、わたしたちの負担の問題はさらに深刻になりそうです。

 

役人からは「再エネでエネルギーの地産地消」なんて言葉もでています。電力の需要地に発電所があれば、大規模送電設備の建設コストも電力ロスも不要になるという算段です。しかし、現実ははどうでしょう。東京に発電所なんかコストが高くて作れない。結果して再エネ発電所は大規模電源以上に田舎にばかり建設されています。需要地と供給地とのギャップはいまだ解消されず、従来型発電所との立地地点の相違もあって、送電線の接続容量不足が顕在化。送電設備が不要どころか増強をしないと新規接続ができない地域がでてきているのが現状です。

送電設備の増強費用や、出力が不安定な再エネをバックアップするための火力発電コストが乗ってくるのも電気料金(これは再エネ賦課金とは別)。再エネが主力電源となる社会は、どうやらお財布に厳しい社会になるようです。

 

ただ、資源に恵まれない日本としては、エネルギーセキュリティの観点からも化石燃料に依存しないことは重要です。「燃料は国内で」「環境にやさしく」「原発はいらない」「電気代は安く」と、キレイごとを言ったり批判をするのは誰でもできる。現実にはどれかを選択し何かをあきらめる必要があります。

IoT技術を活用した次世代ユーティリティ構想も、再エネ発電所のコストが相当程度下がることが大前提。再エネが主力電源化をする道は、少なくとも当面は高いコスト負担を受け入れて、普及や技術改革によるコスト低下、蓄電池の技術確立などを祈るしかないイバラの道なんでしょうね。 

 

 

さて、現実の発電所建設はいろいろ難しいですが、ゲームではカードを出すだけ。次回のボードゲームは、再エネ発電をテーマにした2人専用ゲーム「ハツデン」の予定です。

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ハツデン