ディールトイ(Deal toy)とは
先日ちょっと珍しいものをもらいました。ディールトイです。
ディールトイとは、企業買収や合併・大型のファイナンスが終了した際に記念品としてその会社をモチーフにして作るトロフィーのようなグッズのことです。
「A社とB社の合併。アドバイザー△銀行、資産規模x千億円」というように、ディールトイには取引関係企業と、その取引を示す資産規模などが記載されます。
「〇〇の買収を手掛けた実績あり」と、関わってもないのに実績をアピールするインチキM&Aコンサルタントなどがいるなか、実際に手掛けた関係者で共有化して関与を明確にする目的もあるようです。
航空業界であれば飛行機など、その会社を端的に表す形に作成してオリジナルティを出すなど、形もさまざま。ゴルフのトロフィーや楯などに比べてオーダーメイドの部分もあるので、そこそこ単価はするようで、贅沢なオモチャです。
投資銀行やディーリングアドバイザーが主力のコンサルタントのオフィスでは、このディールトイをズラズラっと並べておき、「こんなM&Aを手掛けたんだぞ」と、実績をアピールするために使われるようですね。私が生きているとこおr、なんだか世界が違います。
今回たまたま「おかげ様で大成功となりました。こんな案件を手掛けてることができ、いい実績となりました。コアメンバーの証としてデスクにかざってください」とディーリングアドバイザーから渡されたディールトイ。
しかし、私はちっともうれしくありません。残念ながら、私はディーラーでもコンサルタントでもなく単なる会社側の従業員。M&Aに関わった実績なんて何のアピールにもなりません。
むしろ、社内では反対していた人も多い今回のプロジェクト。こんなものを飾っていると、逆に反感を買うリスクの方が大きいかも。もらったディールトイは2キロくらいでずっしり。カッとなったときは凶器としても使われそうです。
M&Aを仲介しておしまいのディーラーやアドバイザーたちは、合併や買収が終われば仕事が終了。予定通り終われば成功です。しかしながら会社側はこれからがむしろスタートで、目下の混乱をどう収束させるか、まさに日々頭を悩ませているところ。本当に「成功」となるかは、その後の会社と従業員が幸せになるか次第です。
「いやぁ、よかったよかった」達成感で満足げな表情でディールトイをくれたアドバイザーたちと、住んでいる世界の温度差に微妙な心境となりました。
そして、私はもらったディールトイをそっと机の奥にしまいました。
ディールトイは別名トゥームストーン(Tombstone)とも呼ばれます。M&Aによって泣く人も多いことを考えると、墓標という意味のこちらの呼び名の方が適当なのかもしれませんね。
私はやはり、トイはトイでも本当に遊べるおもちゃの方がいいなぁ。