「海底探険」で「共有地の悲劇(コモンズの悲劇)」を体感しよう。
共有地の悲劇(コモンズの悲劇)という言葉を知っていますか?経済学や心理学を学んだ人は、知っているかもしれません。
誰もが使える共有の牧草地。酪農家たちは自分の牧草地には草が食べつくされないよう気を配りますが、共有地には家畜をどんどん放ちます。結果、牧草は食べ尽くされ、土地は荒れ果ててしまいます。
「共有資源に関しては枯渇の意識が希薄となり、浪費の結果みんなが不幸になる」という経済学の法則です
現代でいえば、大気汚染や海洋資源乱獲などが代表例。ただ、海洋資源も「乱獲する中国が悪い」とする日本人が多いように、みんなが悪いのにモラール欠如が顕著な一部を悪者にしてしまう傾向も。
そんな「共有地の悲劇」の概念を、もし大学講師だったら、これで教えたいなというボードゲーム、貪欲の秋にぴったりな「海底探険(Deep Sea Adventure)」です。
2015年のゲームマーケット大賞作。国産ボードゲームのなかで海外知名度は「ラブレター」などとともに五指に入ると思われる名作です。
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オンボロ潜水艦で深海の財宝を手に入れろ
ゲームのテーマと目的
深海に眠る財宝を求め、探検家たちが潜水艦でやってきました。
潜水服に身を包み、深海へ次々と降り立ちます。しかし、コスト削減のため使用するボンベはみんなでひとつをシェア。
ボンベの空気がなくなれば全員の命が危険にさらされます。強欲な探検家たちは果たして宝を手にして生還できるでしょうか。
「海底探険」は、限られた空気がなくなる前に財宝を獲得することを競う、チキンレースが特徴のゲームです。
内容物
オインクゲームズではおなじみの11センチ×7センチほどのコンパクトなケースに、様々なコンポーネントと多言語対応のマニュアルが入っています。
潜水艦ボード、酸素量を示す赤の空気マーカー。そして潜水服を着た姿の探険家コマ。
木製ダイスが2個。普通のサイコロにみえますが、目が1~6ではなく1~3の目になっています。
三角形、四角形、五角形、六角形の形をしているのが遺跡チップで、32枚あります。片面には点の数で財宝レベルが示され、反対面には財宝の価値を示す得点が記載されています。
レベルが高いほど深海の宝。得点が大きく深い青色になっています。
×マークがついている円形のチップはブランクチップ。16枚あって、財宝獲得時に使用します。
準備
潜水艦ボードを中央に置き、空気マーカーを満タンの25の位置に置きます。プレイヤーは探検家コマひとつずつとり、潜水艦ボードの上に配置します。
遺跡チップは全部裏向きにしたうえで、潜水艦ボードの下方向に、レベル順につなげて並べます。
「一番最近で海に潜った人」がスタートプレイヤーです。
「海底探険」のルールとゲームの流れ
順番にサイコロを振ってプレイヤーコマを進め、財宝を獲得して戻るのが目的です。
手番は、下記1~5の順で進行します。
1)潜水艦に帰還する場合の宣言
潜水艦への帰還したい場合は、ターンの最初に宣言します。戻ると決めたら、以後は潜水艦に向かって進むこととになり、取り消しはできません。
2)空気を減らす
所有している遺跡チップの数だけ空気マーカーを進めます。
ゲームが進むにつれ、各プレイヤーが保有する遺跡チップの枚数が増えていきますので、空気マーカーも加速度的に進むことになります。
3)サイコロを振って進む
2つのダイスを振って、出た目の合計数だけ進みます。
ただし、遺跡チップを持っている場合は宝が重くて進みにくいということで、「出た目の数 - 保有遺跡チップの数」が進める歩数。例えば遺跡チップを3枚もっていて、出た目の合計が4だった場合には1歩しか進めません。
なお、進んでいる場所に他のプレイヤーがいる場合には、飛び越して先に進むまでを1歩とします。
4)遺跡チップを獲得または設置
止まった場所が遺跡チップの場合には、その遺跡チップを獲得することができます(獲得しない選択も構いません)。
遺跡チップを獲得したら裏返しのまま手元に受けとり、代わりにブランクチップを置きます。
止まった場所がブランクチップの場合には、保有する遺跡チップを1つ置くことができます。遺跡チップを置いたら、ブランクチップを戻します。
せっかく獲得した財宝を返却するなんて…と思いますが、空気の減りが少なくなり歩数も回復するので、意外と使うアクションです。
ラウンド終了と勝敗
空気マーカーが0の位置まで到達したらラウンド終了です。
このときに潜水艦まで戻れなかったプレイヤーは探検失敗で海の藻屑となります。
ラウンドで獲得した財宝も海の底。遺跡チップを返却し、チップの列の一番後ろに3枚ずつ重ねておきます。
ラウンドで設置されたブランクチップは取り除き、遺跡チップの列を短くして次ラウンドを開始します。
ラウンドが進むほど、最深部に到達しやすくなり、到達すれば一度に最大で3枚のチップが獲得できることになります。
3ラウンドが終わればゲーム終了です。獲得したチップを表に向けてスコアを計算。合計得点が高いプレイヤーの勝利です。
遺跡チップは、獲得枚数よりもレベルがモノをいうかも。
見かけは空気を共有する仲間、実際は財宝を奪い合うライバル。みんなの欲張りで笑えるくらい失敗に。
財宝を拾うほど減っていく空気は、みんなとの共用。自分がセーブしても誰かが使ってしまうかも。「自分が使わなきゃ損」となります。まさに共有地のシチュエーション。自然とみんな欲張りに。
みんなで空気をセーブしつつ、探検成功のwin-winでも勝負をすればいいのに、決してそうはなりません。遊んでみるとわかりますが、笑えるくらい探検は失敗に終わります。
ターンが進んでくると、進みすぎて「もう潜水艦には戻れない」状況がみえてきます。
そうなったプレイヤーは、映画やドラマに出てくる、戻れなくなって取り残されるシチュエーション。
ただそうなると「俺のことは構わずいけ!」というヒーロータイプではなく、「こうなったら、みんな地獄へ道づれだ!」とさらにチップを拾って空気を浪費する悪役になることが多いでしょう。
最初は手堅くいっていたはずが、ラウンドが進むと高価な財宝がすぐ目の前に。一攫千金の欲目が刺激されて、自然とリスクをとらせるゲームシステムが素晴らしいです。
ひとりだけ早めに帰還しようとすると「裏切り者」の烙印を押され、みんなから沈められてしまうなど、お互いが裏切りあう心理戦の要素も。プレイヤー間の欲望が交錯したインタラクションが楽しいゲームです。
ルール的には2人でも遊べますが、ライバルが1人だと単なる足の引っ張り合いになってしまうので、このゲームの魅力を享受するには3人以上がおすすめです。
先日新幹線で遠出をした際に、道中に新幹線のテーブルで遊びましたが、箱も中身もコンパクトなので持ち運びにもいいかも。
「財宝とりすぎた!もう無理…」「空気ひとりで使いすぎじゃない?」「もう引き返すの?抜けがけはゆるさんぞ!」など、探検シチュエーションで会話が盛りあがる傑作ボードゲームです。
項目 | 公式表記 | コメント |
---|---|---|
年齢 | 8歳以上 | 6歳くらいからいけるかも |
時間 | 30分 | 意外とあっという間 |
人数 | 2-6人 | 3人はほしいところ |
日本語化 | 不要 | 多言語版 |
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
ルールの易しさ | ★★★★☆ | 比較的簡単 |
大人も楽しい | ★★★★☆ | 大人が楽しい |
2人でも楽しい | ★★☆☆☆ | 2人でも一応遊べます |
総合評価 | ★★★★★ | 会話も弾む傑作ボードゲーム |
- 出版社/メーカー: オインクゲームズ
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