「残データ容量が0となりましたので、お客さまの通信速度は低速に切り替わります。」
またやってしまった!
原因は、WI-FI設定を切の状態でスマホを使用していたこと。ちょっと離れた弱いWI-FIスポットに勝手に接続して困るので、設定でWIーFIを切って使用。そのままオンにするのを忘れて、パケットを使いきってしまったわけです。
通信速度が低速化されてしまうと実用的に使えるのはテキストメールの送受信くらい。月が切り替わるまで耐え忍ぶのか、追い金を払ってデータ容量を追加するか…。
それにしても、「パケホーダイ」「データ定額」など、メニュープランとしては定額制をデカデカとうたいつつ、事実上は上限で使い放題とならず。「定額なのは携帯電話会社の収入だけじゃないか」とメニューの名称に八つ当たりしたい気分。
裁量労働制導入によるメリットデメリットは従業員のタイプで違う
さて、話は変わってタイトルの裁量労働制の話です。
裁量労働制とは仕事のやり方や時間配分などについて、会社から指示されずに労働者本人が決定できる制度のこと。このもとでは残業時間は通常「みなし残業時間」として、働いても働かなくても固定的に支給されるケースが多いです。
ちなみに、ここでいう「裁量」とは、仕事量や内容と勘違いする人も多いですが、「いつどうやってやるか」のような仕事のやり方や時間配分に関する狭義の裁量です。
働き方改革関連法案の審議で「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもあるということは、御紹介させていただきたいと思います」という答弁から発生した裁量労働制の炎上。
裁量労働制を推進する政府主導で厚生労働省が実施した調査。すでに導入している企業にアンケートをとって労働時間を調査したものの、データソースが怪しいと問題になっています。
そもそも裁量労働制には労働時間管理の概念がないから、労働時間を会社も本人もしっかり把握していない。そもそも正しいデータなんて存在しないんですよね。
仮に正しい労働時間データがあったところで、従業員のタイプによって影響は全く異なるので、個人的には与党の言う「裁量労働制を導入すると労働時間が短縮される」、野党の言う「裁量労働制で労働時間は増加する」どちらも無意味だと思っています。
この論点を単純化するために、従業員の働き方によって3つのタイプにわけてみました。
メリハリさん
ワークライフバランス第一で仕事をできるだけ時間内で効率的にこなせるようやりくりする人。育児中の時間短縮勤務の人も、労働時間の絶対的な制約があるので、こちらに分類されるでしょうか。
いくら仕事をやりくりしても、業務に閑散期とピークがあるので、結局のところ暇な時期と忙しい時期はできてしまいます。
社畜さん
ブラック企業に多い社畜。上司からどんどん降りてくる指示で仕事をこなすのみ。彼らに仕事への拒否権や裁量なんてありません。
労働時間は会社次第。「帰りたくても帰れない」仕事に自分の意志は反映されません。残業のリミットがあるとすれば法令と体力・精神力の限界だけです。
給料泥棒さん
仕事はできるだけやらず、給料はできるだけ多くがモットー。
会社をクビになっては困るから、あくまでルールの範囲内ですが、サボれるチャンスさえあればサボるし、残業代を稼ぐための時間調整はお手の物です。
メリハリさんを想定すれば、裁量労働によってより効率的に仕事ができるようになり、残業は減るでしょう。
一方で、社畜さんは裁量労働制の管理者を縛る労働時間規制が外れて働かせやすくなります。結果して労働時間は増えるでしょう。
メインとしてイメージしている社員タイプで、全く違う結果をもたらすことがわかります。
裁量労働制導入による労働時間変動のイメージ
さて、具体的な労働時間数をイメージして掘り下げてみましょう。
裁量労働制の導入前、すなわち時間労働制での労働時間は、際限まで働かされる社畜が労働時間のトップ、必要のない労働で残業代を稼ぐ給料泥棒が2番、メリハリさんは3位につけています。これが裁量労働制でどう変わるでしょうか。
メリハリさんは、裁量労働制を活用してピークに働き閑散期に休む、文字通りメリハリワークによって労働時間が減少します。働きホーダイ、休みホーダイです。ただ、もともとメリハリがついているので、それほど減少するわけではありません。
社畜さんはもともと裁量がないところに残業上限規制がなくなり、さらに会社の思うがまま。肉体・精神の限界まで労働時間が増加してしまいます。すなわち働かせホーダイです。
給料泥棒さんは、働いても働かなくても給料が変わらないんだから、今度は働かなくなります。今までの残業を稼ぐ小細工ももはや不要です。サボりホーダイですね。
以上のように、3つのタイプの社員に単純化してみるとわかりますが、従業員のタイプと構成比によって、裁量労働制導入に伴う労働影響はプラス方向にもマイナス方向にもなります。
例えば3タイプの社員が均等に存在する会社なら、この表の単純合計であるマイナスの影響です。でもこれで「裁量労働制の導入で時間外労働がマイナスに」とは言えないですね。
一見数字のうえでは労働時間が減少して裁量労働制の効果があったかに見えますが、原因は給料泥棒が働かなくなった(もともと働いてないので見かけの数字だけ)ことが太宗です。このマイナス影響で、社畜が猛烈に働かされているのが見えなくなってしまう構造となります。
平均労働時間が計測できて、その数字で評価したところで、ミスリードとなる危険性がことがわかります。
私の考える裁量労働制~スマホプランのモデルを見習おう
スマホプランのような「働きホーダイプラン」はいかが?
裁量労働制による労働時間の変化とそのミスリードを述べましたが、私は別に裁量労働制の導入に反対といういうわけではありません。
冒頭のスマホの話に戻りますが、私の考える裁量労働制は、まさにスマホの定額プランにならったもの。単なるネーミングの話ではなく、裁量労働制にあたって時間管理を前提に労働時間の上限規制を設けることが必要だと考えています。
時間管理は給与計算のため、裁量労働制=時間管理しないというのが今の慣例ですが、時間管理はIT技術を活用すれば簡単にできるはず。裁量労働でも労働時間管理をしっかりすればいいんです。
そして一定の上限時間をオーバーしたら、スマホのプランと同様に低速化(それ以降の労働を厳しく制限)、追加データ購入(ボーナス支給)を事業者に義務付けるわけです。
これによって定額働かせホーダイが防止され、過剰労働の抑制効果が見込めることは、スマホのデータプランのビジネスモデルが示しているでしょう。
私は権限もロクにないしがない中間管理職ですが、ここ数年裁量労働制のもとで働いています。当初は「毎月固定給なんて育児時間短縮での勤務みたい。時短なら残業しなくてもいいけど、残業がある分劣化版だね。」なんて妻に皮肉られていたときもありましたが、やりくりができるようになってからは労働時間は大きく減少しました。
裁量労働制はうまく使えは、長い時間働きたい仕事人間がたくさん働けて、ダラダラ仕事をしたくない人は早く帰れる良い制度。ただ前提となる裁量が大事なところ。「裁量なき裁量労働制」によって、弱い立場にある人が不利益になることは避けなければなりません。
生産性向上には給料泥棒対策が大事
働き方改革に大事な要素として、裁量労働制の議論ではあまり焦点にならない給料泥棒の撲滅が私は大事だと思っています。
私の働く会社は、社畜にあふれるブラックな労働環境でしたが、あまりにもひどく労働基準監督署の調査が入り、それ以降は残業がきっちりつくようになりました。
これでみんなメリハリつけて早く帰れるようになると思いきや、みんな帰らない。大半は残業をつければ金になるということで、「残業稼ぎ」の給料泥棒にクラスチェンジしてしまいました。残業時間はほとんど減らず、仕事のアウトプットが減り人件費が増加(これは適正化されただけ)したわけです。まぁ、元はといえば長時間労働に慣れさせてしまった会社の罪ですけどね。
結果して「メリハリある仕事をする人ほど給料が少ない」「裁量労働のマネージャーに昇格すると給料が減少する」「子供の世話などで時間制約ある特に女性が活躍できない」という給与・人事制度のねじれが目下の問題となってます。
みんなの給与水準と生産性を落とす給料泥棒に、余分な残業代を払わないという意味では、裁量労働制の拡大も一定の効果があると思っています。
働き方改革関連法案をゴリ押ししようとする与党と、政策つぶしに躍起になり否定しにいく野党との対立構造ばかり目立っていますが、ぜひともゼロかイチではない建設的な議論をしてほしいものです。