私は、散髪をしているときに色々話しかけられるのがあまり好きではありません。
一度、初めて行ったお店で、あまりにしつこくしゃべりかけられたので、うんざりしてきて途中で黙りこんでしまいました。
切り終わった後、「うちのお店のウリがお気に召さなかったですか?」と言われました。
そのお店の看板には、CUT&PARM ではなく、CUT&TALK、と書かれていて、店主のマシンガントークがウリだったというオチでした。
最近では、だいぶ大人になってきたのもあり、適当に話を合わせるようにしています。
なんだかズレてる
いつも行っている近所の理容室に行ったときのこと。
床屋のおっちゃん
「最近、ワイシャツのアイロンを自分でかけるようになったんですが、何かコツってないですかね。」
(天気とかでもなく、のっけから、ピンポイントな話題だなぁ。確かに床屋じゃワイシャツは着ないから聞きたいのかな?)
「いや、若い頃はアイロンかけていましたが、最近では面倒になってきてしまい、もっぱらクリーニングに出しているんですよ。」
「ほほう、プロでも工場に出すわけですな。なるほど。」
(プロ?まぁ、仕事でワイシャツを着ているから、プロといえばプロだけど。)
「そうそう、向こうの通り近くに今度、大きいマンションが立ちますでしょ。うちも客が増えるかなって思って期待しているんですよね。お客さんところもいいんじゃないですか?」
(マンションラッシュで景気がいいってことかな)
「いやぁ、私の仕事には全然関係ないですね。」
「あ、そんなもんですか。ま、離れてますしね。」
(離れているもなにも、関係ないけどね。ま、いいか。)
「うちの店は、最近は雨の日でも日曜日が忙しくって、このとおり。1日立ちっぱなしで足が痛いんですよね。
やっぱり、この間も祭りで近所がみんなハッピ着てたりするから、忙しかったんじゃないですか?」
「(祭りは関係ないけど)最近ではなかなか忙しくって、午前様になることもありますね。私はむしろ、ほぼ1日座りっぱなしなんで、腰の方が痛いですね。」
「えぇぇ!ほとんど1日座ってるんですか? それまたスゴイ!」
(デスクワークで座っているのをすごいっって言われても・・・普通にいそうだけど。)
「いやぁ。それに午前様って・・・、一体そんな夜中までどんなことをやってるんですか?」
(何やっているかとストレートに言われるとグサッとくるなぁ)
「そうですね。売上を分析したり、上から言われる資料をつくったりとかでしょうかね。」
「売上分析ですか・・。うちも店が終わって飲んでる場合じゃないかな。本部からの要求もあったり、独立もなかなか大変ですね。独身だと自由がきくとはいえ、夜遅くまでは大変ですね。」
(本部?独身? そうか、別の人と勘違いしてるのか?)
もう一人の自分
確認のため、こちらから話題を振ることにしました。
「そういえば、いつも行かれているボズ・スキャッグスは、今年は来日しそうですか?」
「今年も来ると踏んでるんですよね。もちろん店を休みにしていきますよ!
あーっ!音楽が好きな方の人だった!」
「私、ずっと人違いしていまして、大変失礼いたしました。
いやぁ、お客さんにそっくりな人がいてですね。
この近くでクリーニング店をやっているそうなんですが、ウリ2つでして・・・。
今日は、もう一方のクリーニング店の店長の方だとすっかり思い込んで話していました。
五月雨さんのエピソードを思い出してしまいましたが、私は「似てる」と言われることはなかなかないので、なかなか新鮮です。
「私に似ている人・・・、どこのクリーニング店ですか?」と、言いかけてやめました。
ドラマに出ている人とかならともかく、クリーニング店主を実際に見てみて、あまり似てなかったら、それはそれでガッカリしそうだし。そもそも自分に似ているという時点で、パッとしてないかも。
それよりも、違う宇宙でもパラレルワールドでもなく、自分が住んでいる町内で、クリーニング店を営んでいるもうひとりの自分がいて、全く別の人生を送っている。
彼は独身生活を謳歌してるのか、幸せなのか、なんてクリーニング店を見かけるたびに想像できて、何だかおもしろい。