私が働いている会社は、古くさい男性中心の会社ですが、最近はそれを変えようと女性活躍にかなり力を入れています。
先日も、社長と幹部社員との集まりで「女性活躍を私が推進しているのに、幹部女性が少ないじゃないか!」となったとか。
そうはいっても女性幹部社員なんていません。結果して急遽年配の女性にスーツを着させた「偽装幹部社員」が集められました。
見栄えだけ取り繕っても全く意味はないのですが、写真が社内報に掲載されます。社内の女性社員に「女性もたくさんいるからがんばってほしい」とアピールをしたいようです。
昨今は人手不足で人材の確保が難しくなってくるなか、電車の優先席のように管理職の女性枠を設けるなど、経営者は女性の活用に躍起になっています。しかしながら、現実は思うようにいかず、ギャップが大きいようです。
決して女性の能力が足りないというわけではありません。主として、まだまだ社会的に家庭での女性の負担が大きさや男女での給料格差から、「家庭を守る責任があるのに、仕事で重い責任を負いたくない」という理由で、会社での地位に二の足を踏む女性が多いようです。
「活躍したくてもできない」女性って多いんですよね・・・。
そんなできるワーキングマザーの悲哀を、ファンタジー世界になぞらえて描いた「伝説のお母さん」、とても面白いです。
www.ippaikaasan.com
使えないS君はニューリッチ
さて、前回のエントリーで紹介した橘玲さんの本に登場する「ニューリッチ」な生き方、こんな感じなのかなという会社の後輩のS君の話です。
S君は、とにかく仕事をしないことで有名です。
二言目には「そんな仕事できません」「それは僕の担当ではありません」と、基本的に仕事に対してはネガティブスタイル。
そして定時になったら誰にも構わずにすぐに帰る。有給休暇は完全消化。仕事を拒否したり押し付けたりするので、同僚や上司からも評判が悪いです。当然昇進も一番遅くなりました。
「使えないやつ」なので能力が低いかというと、そういうわけではありません。
自分がやると決めた仕事はきっちりこなすし、質問をすれば打てば響く返しをするので、能力は実は高いのかも。ちなみに出身は京都の超一流大学。
彼に欠けているのは「会社に貢献しよう」という気持ちですね。ただ、よくよく彼と話してみると、それが気持ちとはちょっと違うことがわかります。
「残業ですか?絶対にやりませんよ。残業単価は妻の方が高いんですから。時間の余裕があるのなら、僕が家事育児をして妻に残業をしてもらいます。」
「女性活躍推進が盛んな中、女性である妻の立場の方が管理職の成り手がなく椅子が余って有利です。女性にポストが取られた後の椅子取りゲームを僕がするより断然効率的です。」
彼が仕事をやらないのは合理的に計算された行動。もっとも家計を豊かにするために、彼はクビにならない程度に定時まで働き、妻が稼ぐ戦略に徹しているわけです。
会社への貢献度と収入のイメージ図
横軸を男性側の会社への貢献(残業など)縦軸を世帯収入にしてイメージにしてみました。人はできるだけ稼ぎたいから、☆印のところに向かうインセンティブが発生するということにな「まふ。
専業主婦で夫が稼ぎ手の場合のグラフはこんなイメージ。
実際のところは程度問題はあって頭打ちになりますが、会社に貢献すればするほど残業や昇進で収入は上がります。
収入の極大化には、とにかく会社に貢献すること。多少のサービス残業もいとわない姿勢が大事。
収入がない専業主婦の妻は最大限のサポートをして「夫にできるだけ働いてもらうこと」が大事。結果して「亭主元気で留守がいい」となるわけです。
共働きの場合は、夫の収入に妻の収入が乗っかってきます。
あまりにも夫が会社に尽くしすぎると共働きは成立しなくなくなります。収入最大化をするための仕事ぶりは、サポート体制にもよりますが2人での仕事と家庭が両立できるギリギリのラインになります。
大黒柱が一人なのに比べると、セーブされるわけですね。
そして、S君のような妻がメインの働き手となるケース。S君が会社に貢献しないほど、妻ががんばって稼いでくれる。働かない方が最経済となるわけです。
夫が稼ぎ手の場合の妻の側のグラフもこんな感じでしょうね。働き手であるパートナーを優先し、家事などサポートに回ると、必然的にセーブした働き方になるわけです。
新時代の勝ち組サラリーマン
S君は言います。
「社長くらいになれるならともかく、会社に尽くして努力を重ねて出世しても、うちの給料じゃせいぜい2、300万違うだけ。それだったら、妻の稼ぎをよくする方が経済効率がよいです。」
「まぁ強いて困ることといえば、大学の先輩などから『お前、そんなので男としてのプライドはないのか』と、バカにされることくらいですかね。でも、男のプライドとやらに固執してあくせく働いて拘束されるよりも、豊かで自由な生活の方が大事ですからね。」
確かにS君の生活は、外車を乗り回し、GWと年末年始は必ず海外旅行。輸入家具であふれた駅近の戸建てに住み、とてもサラリーマンの生活とは思えません。どこからどう見ても勝ち組です。
経済的な自由のみならず、会社に束縛されない自由を獲得している、まさに共働き時代の勝ち組サラリーマンといえるのかもしれません。
「50歳を超えたら早期退職制度に応募し、割増退職金をもらってリタイアする計画です。帰社後の自分の時間はスピンアウトしてもやっていくための準備としても役立てます。」ライフプランもしっかりしています。
こんな若者は徐々に増えてきているようですね。不透明でリスクの多い時代、橘さんの述べるように、確かに賢い若者はパートナーとして専業主婦志望の女性を選ばなくなるかもしれませんね。
S君のような社員が増えてくると、困るのは経営者や管理者です。こんな従業員や部下が増えてくると、従来のような会社への忠誠を前提としたマネジメントは通用しなくなります。
終身雇用と年功序列とセットでの滅私奉公。会社が運命共同体だった日本的経営の時代は、ライフスタイルの多様化で終焉を迎えてくるのかも。よりドライなマネジメントが必要となってくるのかもしれませんね。
![専業主婦は2億円損をする 専業主婦は2億円損をする](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51X15O2cyDL._SL160_.jpg)
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2017/11/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る