台風による千葉の停電、長引いていますね。まだまだ気温が高い中、電気のない生活が長くなるのは非常に大変ではないかと思います。体調には充分お気をつけください。
今回の台風の直後に、作業に関わった人の話を人づてで聞くことがありました。「かなり設備が広範囲にやられていて、故障箇所が多くて特定が難しいらしい。復旧は長引くかもしれない。」
その時はは「そうはいっても停電なんて2,3日だろう」と思っていましたが、蓋をあけてみるとかなり長引いていますね。あのとき聞いた話は本当だったんだなと思い返しました。
そのとき聞いた話では「その後の雨も怖い。台風の飛来物でできた電線の亀裂に、巻き上げられた海水の塩が付着している状態。その後に塩分が残った状態で雨が降ると導電性が高まってショートして火花になるケースも」という話も。
昨年は確か静岡あたりで台風後に電線から火花があがり停電という事象がありました。
千葉県近郊にお住いの方は、今停電していなくてもリスクがあるかも。電気設備にはむやみに近寄らぬようお気をつけください。
停電復旧作業の思い出
私が20歳そこそこだった頃の遠い昔。集中豪雨で広範囲に停電した際に、なんちゃってではありますが、作業のお手伝いをしたことがあります。
手伝いといっても、技術者でもなく知識も技能もない私は、短期アルバイトのドライバー。集中豪雨で地域が半孤立状態だったので、「猫の手も借りたい状態だから運転手をしてくれ」と、知り合いから当時近くに住んでいた私に声がかかりました。
ミッションは電力会社の作業員を車に乗せ、停電しているエリアの機器を点検して回ること。いわゆる故障巡視ですね。
豪雨によって周囲は膝までの水位。道路には水に浸かって動かなくなり放置されたとみられる車両が点々と放置されています。
「こんなに水がある状態での車を運転して本当に大丈夫ですか?やっぱり電力用の車には水没しないような装備がついているんですか?」
「そんなもんあるか!見た通り普通の軽だ。水没したらそのとき考える。それまで気合で乗り切れ!」
「気合といっても…」
信号も消えてあたりは真っ暗闇。豪雨で視界も不明。当時はナビもなかったので、よく知っている道のはずが、どこを走っているかもわかりません。ホラー映画のゴーストタウンに迷い込んだかのような感じです。
現地に着くと、作業員はひとり水をジャブジャブかき分けて機器を見にいきました。ポツンと車内に残された私は「このまま帰ってこずにひとり残されたらどうしよう」と、不安でいっぱい。実際危険なのは雨の中で電気機器に向かう作業員の方なんですけどね。
「あと5件回るぞ。水かさが増してきているな…。車動くかな。おまえ、電柱は登れるよな。」
「いや、登ったことはないですが…。」
「ま、ヤバくなったらそのとき考えよう。今は回るのが先だ。」
運がよかったのか、その時は車が故障停止することもなく無事に事務所に帰ることができました。
「いやぁ、灯りが消えてゴーストタウンのようで怖かったです。しかも、いつ水没するかもわからないし。」
「お前も怖かったろうが、そんな真っ暗な建物の中にいるお客さまはもっと不安なんだよ。最近はロウソクなんかも家になくなったしな。」
「だけどな、真っ暗だったところに灯りがともるだろ。それでお客さんの顔がパッと明るくなるんだ。そして『ありがとう』と言われたときが、この仕事をしててよかったと思える瞬間だ。まぁ『遅いじゃないか!』と怒られることも多いけどな。」
なんかかっこいいなと思いました。
お手伝いだった私は、夜明けで解放。作業員の方は、さらに次の現場に出て行きました。
その後話をきくと、同乗した作業員の方は2日間に渡って勤務。ずっと作業をしていたせいで、彼の家にある私有車は安全な場所に移動させることができず水没。そのときの豪雨では、彼のみならず作業員の自家用車の多くは廃車になったとのこと。
かっこいい使命感には代償がつきもののようです。
作業員の方に感謝やねぎらいの言葉をかけられますか?
電力会社やその関連会社、自衛隊などには「台風警報が出たら」「震度5以上の地震が起きたら」のように、災害が起きたら時間や休日にかかわらず出勤しないといけないルールがあるそうです。
なんてブラックなルールだと思いますが、そうしないと復旧作業に人を集めることができないわけです。
もし自分の家が停電や被害にあっていても、出社しないといけないのはなかなかシビレます。
千葉で復旧作業に携わっている方の中には、きっと自分の家がまだ停電中にもかかわらず、家族に後ろ髪を引かれつつ来ている人もいるんでしょうね。
「電気料金を払っているんだからつけるのは当たり前」「税金払っているんだから自衛隊が働くのは当然」という方もおり、それはそれで正しいかもしれません。
でも、そこで活躍している作業員は、それぞれが生活があるなかで、危険な場所へ出向いている。仕事とはいえ、なかなかできません。
若い頃に一緒に過ごした人を思い出しながら、私は作業している方への「ありがとう」の感謝の気持ちを忘れたくないなと思いました。
今回の大きな災害が起きれば全国から応援。私の故郷の九州からも応援部隊が行っているようですね。
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遠路はるばる応援にきて、地元に持って帰るのがどんな言葉なのか…。ぜひとも達成感をもって地元に帰還してほしいものです。
危機的な状況にこそ人間の本質が出てきます。間違ってもどこぞの政治家のように、ここぞとばかり声高らかにパフォーマンスに走ったり「不眠不休で作業しろ」と追い込んだりするような人間にはなりたくないですね。