パナソニック創業者の松下幸之助氏の有名なエピソードのひとつに「採用面接において運の良さで合否を決めた」というものがあります。
応募者に「あなたは運がいいですか?」と尋ね、「運が悪い」と答えた人は、どれだけ優秀な人でも採用しなかったとか。
「運の良さ」という、努力ではどうしようもできない要素で一生を左右する就職の合否が左右されるなんて…。なんだか乱暴な気もします。
そもそも運の良さなんていう抽象的な要素が、社会でどれだけ役に立つのでしょうか。
運の良い人が社会で秀でている3つの理由
世の中を見渡すと、本当に運の良い人を採用しようと「じゃんけん採用」を選考に取り入れる企業もあるようです。
ただ、松下幸之助氏の場合は、この会社のような超常的な概念での運の良さではなく「運の良さを自認していること」を重視していたと思っています。というのも、運の良さを自認する人は、以下の3つの点で合理的に考えても秀でているといえるからです。
運の良い人は、ポジティブな解釈ができストレスを感じにくい
帰り道、自分の家に到着する直前で、パラパラと雨が降ってきました。
「家に到着する前に雨が降っちゃったよ。ついてないなぁ。」
「家にちょうど着くところで降ってきて、大して濡れずにすんだ。ラッキー。」
あなたはどう感じるでしょうか。
コップに水が半分入っている。「まだ半分入っている」とみるか「半分しか入っていない」とみるか。
物事は見方ひとつでプラスにもマイナスにも解釈することができます。
実は幸運も同じで、同じ出来事でも幸運と感じるのか不幸と感じるのかは、人によって違う場合があります。
もしも降りかかる出来事が皆同じだという前提では、「運が良い」を自認する人は、よりポジティブな解釈ができている人ということになります。
物事をポジティブに捉えられる人の方が、当然ストレスを感じにくく、困難な状況でも打ち勝つ可能性が高くなります。また、良い結果となったときの満足度も高いので、モチベーションも相対的に高くなり推進力が高いことでしょう。
運がいい人は、失敗を外部環境のせいにせず成長する
「いやぁ、今日は反応の悪い客ばかりでついてなかったよ…」仕事がうまくいかなかった原因が、不運によることはよくあります。
だけど本当に100%不運が原因なのでしょうか。たびたび「不運」を持ち出す人は、とかく自分以外の外部環境に原因を求めがち。不運であれば自分のせいではなく、どうにもしようがありません。でも運のせいにした時点で、原因究明を放棄して思考停止に陥ってしまっているのかもしれません。
失敗に終わった現実を直視して「自分にも原因はないか」「同じ結果にならぬよう何かできることはないか」と反省・改善することを放棄してはいないでしょうか。
「運が良い人」は、失敗を「不運な出来事」ととらえるのではなく、自分の行動による必然的な結果と受け止めて改善・成長させていく意識が強い人が多いです。原因が偶然ではなく自己にあるとみるから、それを不運として感じることが少ないわけです。
失敗を不運のせいにする人と対照的に、成功者においては「僕はたまたま運がよく恵まれていただけですよ」と、成功を逆に幸運のせいにして、自分の力に驕らず精進する人が多いといえます。
運が良い人は、自らの行動によって幸運をつかみ不運を回避する
「今日は朝から犬のフンを踏んでしまったよ。ついていないなぁ。」これは本当に運が悪いのでしょうか。
「いつも歩くルートに犬のフンが落ちていたこと」は不幸な出来事です。でもそれを踏んでしまったのは、自分の行動による結果ともいえます。
もし足元を注意していれば、実は回避できた不幸だったかもしれません。
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興味がある方は「運の良さ」を科学的に検証したワイズマン博士の本を読んでみるといいですが、彼の研究に「運が良い」「運が悪い」と自認する人たちをカフェに集めた実験が登場します。
カフェの入り口に密かに5ポンド札を置いておくと、「運が悪い人」の多くは、5ポンド札に気がつくことなくスルー。一方で「運の良い人」は見つけることが多かったとか。
あなたに50万円の臨時収入があったとして、それをすぐギャンブルにつぎ込みスッってしまえば単なるあぶく銭。一方で、それを元手に成功することができれば、これはまたとない幸運な出来事となることでしょう。
運命は変えることはできないけれど、出来事を受けての行動は自ら選択することができる。運が良い人は「幸運」を発見して自分のものにし、「不幸」を回避する能力に長けているといえるかもしれません。
「運の良さ」は心がけと行動次第で作れる!
以上のように、運の良さは相対的なもの。さらに、感じ方と行動によって「運の良さは作れる」と言ってもよいでしょう。
起きる出来事は神様でもなければ変えることはできない。でも、出来事を自分がどう解釈するか、そしてどう行動するかは本人次第なわけです。
自分が「運が悪い」と思っている人は、心がけや行動を変えてみると、今よりももっとラッキーな人生が待っているかもしれません。
次回はダイスの運を賢い選択で選択する「ガンツ・シェーン・クレバー(ガンシュンクレバー)」
数字でシートを消していくビンゴゲーム。ビンゴになるかは運次第です。「ビンゴが強くていつも勝つ人」は本当の意味での「運が良い人」でしょうが、そんな人は聞いたことがありませんね。
次回紹介するボードゲームは、ビンゴのようにサイコロの出た目でシートを消していく運がかなり重要なゲーム。しかしながら、プレイヤーの選択で結果は大きく変わり、賢い選択をしなければ高得点は期待できません。このシステムに、私は運命と行動のミックスで決まる人生を感じてなりません。
というわけで、次回は紙ペンゲーム「ガンツ・シェーン・クレバー(ガンシュンクレバー)」の予定です。