私が働いているフロアには、業務用のシュレッダーが1台置いてあります。
シュレッダーの容量は80リットルくらい。満タンになるとFULLランプが点灯して止まるので、袋に入った屑をゴミ捨て場に持っていき、新しい袋をセットする必要があります。
割と紙を使うので、すぐにいっぱいになるのですが、職場には暗黙のルールがあります。「シュレッダーのFULLランプをつけた人がゴミを捨てに行く」
まぁ至極当たり前な感じですが、どれだけ大量にシュレッダーしてもFULLにならなきゃOK。逆に2,3枚をシュレッダーしにいってもFULLになればゴミ捨て担当になるので、よくよく考えれば若干不公平ともいえます
そして、周囲の社員のなかでは密かなゲームが繰り広げられています。それは「できるだけ他人にゴミを捨てにいかせよう。」
若手のAくんは言います。
「ちょっとした自慢ですが、僕、この2年くらい、一度もシュレッダーゴミを捨てたことないんですよね。
その秘訣は、常にシュレッダーが動くときにチェックしてゴミの量を推定しておくこと。誰かがゴミを捨てれば推定量をリセットするわけです。そして、自分がシュレッダーを使うのは、絶対にゴミが溜まってないとき。
2年も続けていると技にも磨きがかかってきて、ほぼ正確に予測できるんです。見ててください。今はおそらくギリギリのところ。僕の見立だと、あと2、3人ってとこかな?」
ゴミ捨て場までは5分もかからないので、そんなの気にするなよと思いもしますが、彼にとっては殺伐とした職場での、娯楽のひとつのようです。
見ていると、なるほど確かに2人目にして満タンになりました。「え〜、また満タンかよ。俺、今週捨てるの3回目なんだけど。」という別の若手社員のBくん。
えてして、Aくんのように力の持っていき先を間違えている人間、Bくんのように状況に気が付かず損な役回りになってしまう人間。どちらも仕事はイマイチだったりするんだよなぁ。
コップの水をこぼしたら、たくさん入れた人が悪いのか、最後に注いだ人が悪いのか。このように世の中には、きっかけを作っただけなのに、最後にオーバーさせた人が原因とされることが多いもの。
プロジェクト管理の世界も、最初に問題を表面化させた人がしばしば責任を負うケースがよくあります。なので他の誰かがバーストしてしまうまで、進捗が遅れていても順調にみせかけることがよくあります。
そんな開発プロジェクトの進捗管理はブラフゲームそっくり。というわけで、プロジェクト管理をテーマにしたカードゲーム「Not My Fault!~俺のせいじゃない!」です。
目標はプロジェクト完成?それともプロジェクト失敗の責任を負わないこと?
ゲームのテーマと目的
あなたはシステム開発会社の社員です。同僚と協力して仕事の完成を目指します。
プロジェクトの納期まであと30日。進捗遅れが許されるのは1回だけという、綱渡りのケジュールがひかれています。
もしプロジェクトが破たんしてしまったら、直前に手を動かしていた人の責任。生き残るためにはウソもあり。バレなきゃ自分のせいじゃない!
内容物
カレンダーのようなカードが、プロジェクト進捗を管理するマイルストーンカード。大きな矢印は進捗状況を示すポインタカード。2つを重ねて使います。
プロジェクト遅延のペナルティをカウントする「戒告」の文字が書かれたイエローカード、裏は黒色です。さらにラウンド敗退を示す「停職」の文字が書かれたレッドカードです。
プレイヤーの手札となり、プロジェクトを進捗させる数字カード。0から6までの数字が描かれています。ほとんどのイラストはサボっていますね。
準備
マイルストーンカードをテーブルの中央に置き、ポインタカードを0の位置になるように重ねます。
数字カードをシャッフルし、裏向きで山札として中央に置きます。
イエローカードは1枚ずつ配り、黒い面を上にしておきます。
スタートプレイヤーを決めたら準備完了です。
ルールとゲームの流れ
手番がきたら、「プロジェクトの進行」か「監査」のいずれかの行動をします。
プロジェクトの進行
山札の上から1枚カードをひき、中身を確認して目の前に伏せます。
そして、どこまでプロジェクトが進んでいるか、みんなに合計数を申告してポインタカードを動かします。
あくまでも自己申告。正しい進捗を知っているのは自分だけなので、ウソの申告をしてもOK。
というのも、ポインタで示して進捗報告ができるのは、原則として予定スケジュールである次の白抜き文字(5,8,12,17、23、30)だけです。
2じゃ全然届かないなぁ。困ったぞ。
それ以外の数字を差す、すなわちスケジュール遅延で申告できるのは、ラウンドで1回だけ。その場合は進捗遅れを注意されたということで、イエローカードを裏返します。
監査
自分の前のプレイヤーが進捗報告がウソだと思ったら、「監査」を宣言できます。
監査が宣言されたら、全員のプレイヤーが伏せたカードを表にして、合計進捗の確認です。
前のプレイヤーの申告値より、合計数が小さければ、進捗遅れが判明し監査成功。前のプレイヤーがレッドカードを1枚受け取ります。
前のプレイヤーの申告値より、合計数が大きければ、プロジェクトは正常に進捗していたということで監査失敗。監査を宣告したプレイヤーがレッドカードを1枚受け取ります。
監査が終了したらいったんラウンドを終了し、次のラウンドを開始します。
勝敗
レッドカードを2枚受け取ってしまったプレイヤーが脱落です。
一方で、誰かが30を宣告してプロジェクトを成功した場合には、そのプレイヤーの勝利となります。
「ダウト」が「監査」に変わるだけでリアリティが出てくる?
ひいたカードは、目標とする進捗に足りないものばかり。基本的に嘘の報告をしなくてはなりません。
日数が経過するほどプロジェクト報告は厳しいことに。30日で完成させるには、プレイヤー全員が確実に進捗させる必要があります。進捗遅れが許されるのは全体でもプレイヤーの人数分だけ。嘘をついたり足を引っ張ったりするプレイヤーが出てくるなか、少人数で遊ぶとプロジェクトの完成はまず不可能。ブラックな設定だなぁ。
嘘の報告が多いので、「監査」を宣言したいところですが、監査に失敗すると自分にレッドカードが降ってきます。一方で、見過ごしてしまえば一旦リスクを負うことはありません。嘘とわかりつつも確実でなければスルーしていくことになります。
だけど嘘っぽい進捗報告が積み重なってくると、自分がいかにまじめに報告しても、次のプレイヤーの監査でレッドカードがくるリスクも高まります。どこで監査を宣言すべきか…。
まともに進捗させてたのは自分だけ?みんなサボってるじゃないか!おいおい、これで俺の責任?
出すカードを考えて選択することできないので、引き運の要素が大きいパーティゲーム。ゲームシステム自体には真新しい要素はなく、単なるブラフゲームとして評価すれば「ごきぶりポーカー」なんかの方が面白いかも。
www.boardgamepark.com
しかしながら、「Not My Fault!〜俺のせいじゃない!」の魅力は何といってもゲームとマッチした秀逸なテーマ。
先回のプロジェクト管理の記事は、ニッチな話題と思っていたのに予想外に反響が大きく、私のブログには珍しくSmartNewsにも掲載されていて驚きました。そんな理不尽なプロジェクト管理を知っているメンバーでネタゲームとして遊ぶと、なかなか盛り上がります。価格も1,000円以下ということでかなりお手頃ですね。
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「みんなヒドイ進捗すぎる!」「俺はちゃんと進めているのにどうして責任とらないといけないんだよ!」と、仕事の理不尽さと重ねて愚痴りながら楽しめるブラックユーモアに溢れた大人のゲームです。
項目 | 公式表記 | コメント |
---|---|---|
年齢 | 10歳以上 | 簡単だけどテーマが子供じゃわからない |
時間 | 10分 | サクッと終わります |
人数 | 2-8人 | 4,5人が適正かも |
日本語化 | 不要 | 日本製 |
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
ルールの易しさ | ★★★★☆ | 比較的簡単 |
大人も楽しい | ★★★★★ | 大人しかも関係者向きのテーマ |
2人でも楽しい | ★★☆☆☆ | できるけど… |
総合評価 | ★★★☆☆ | 元ネタがわかる人には楽しい |
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