親子ボードゲームで楽しく学ぶ。

世界のボードゲーム・カードゲームを楽しもう!初心者や子供におすすめなライトなアナログゲームを紹介します。

なぜオリラジ中田敦彦はカードゲーム「XENO」でアナログゲーム販売を始めたのか?

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オリエンタルラジオの中田敦彦氏が考案したカードゲーム「XENO」。2019年10月に一般発売されて以来、ちまたで話題となっています。
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ボードゲーム好きの人気芸人としては、サバンナ高橋さんやノンスタイル井上さんなどが知られていますが、オリラジ中田さんは聞いたことがありません。

最近ではアパレルブランド「幸福洗脳」や、オンラインサロン「NKT online salon」など芸能活動以外でかなり手広く活動している中田氏。

以下の動画で「XENO」をはじめた経緯について語っていますが、今回はオリラジ中田さんが門外漢のアナログゲームに参入したことについて考察したいと思います。

中田考案のカードゲーム「XENO」が始動!

ルールなどゲーム内容の紹介は別記事にて。
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アナログゲームへの参入の事業性をフレームワーク3Cで分析してみる

カードゲーム「XENO」の製作は、結論から先に言えば「ビジネスとして魅力的だから」というのが参入の理由でしょう。

ビジネスの観点でみるために、XENOの事業性について、マーケティング分野で活用されるビジネスフレームワーク「3C」でざっくり分析すると以下のようになります。
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改めて可視化してみると、一般人に抜群の知名度をもつオリラジ中田氏の参入は、事業としての優位性が見込めることがわかると思います。

市場・顧客(Customer)〜日本のアナログゲーム市場は未成熟だが成長の可能性あり。

ボードゲームといえば、「人生ゲーム」をあげる人が日本では多いでしょう。日本では欧米に比べるとアナログゲームは普及していません。
この狭い市場を現在支えているのはマイナーなボードゲーム愛好家が中心です。

一般に普及していないということは、市場拡大の余地が残されているということ。さらに近年メディアへの登場も徐々に増え、成長の兆しが見えている市場です。

トランプやUNOしか知らない一般人は、みんなが手をつけていない潜在顧客。ニーズを掘り起こせば、拡大する可能性を秘めています。

ただゲームは娯楽品。代替の娯楽がたくさんあるなかで、もともと関心がない一般人が「欲しい!」と思うには工夫が必要ですね。

競合(Competitor)〜新規参入が容易で零細事業者がひしめく

近年のデジタルゲームの世界では、アニメーションやCG、良質なサウンドやボイスが当たり前。プログラムの難易度も高まり、ひと昔前に比べて開発費が高騰しています。

一方で、アナログゲームは昔も今も紙がベースです。数字や絵を描くことが基本で、イラストと印刷が主体なので、デジタルゲームにくらべてコストは低く圧倒的に参入は容易です。

アナログゲームの祭典「ゲームマーケット」では、個人発の同人ゲームがひしめきあっています。

日本のアナログゲーム業界では、大企業がないことも特徴。有数のパプリッシャー兼ショップである「メビウスゲームズ」さんが、ご夫婦で経営されている店舗であることから見てもわかるでしょう。

圧倒的な資金力をもってすると、業界のドミナントプレイヤーになることも可能かもしれません。

自社(Company)〜圧倒的な知名度と熱狂的なファン

「オリラジ中田」を知らない人は、若者世代にはほとんどいないでしょう。また、オンラインサロンをはじめとした彼の活動は「信者ビジネス」と揶揄されるくらい、熱狂的なファン層を抱えています。

彼が新たな活動をはじめた際には、ファーストユーザーとしてすすんで実験台となり、SNSで広めてくれるファンに期待もできます。

さらにはアパレルブランド「幸福洗脳」で培った独自の販売チャネルもあります。

一方で、中田氏にはこれまでアナログゲームにおける実績やノウハウはありません。それを補ってあまりあるのが彼の人気です。

強みを活かし、弱みを強化したうえでのカードゲーム参入

中田氏の「人気」という武器を最大限活用し、「オリラジ中田考案」を前面に据えたのが今回の「XENO」のプロジェクト。

アナログゲームにおいて門外感という「弱み」については、カナイセイジ氏という世界的なボードゲームデザイナーの作品を原案とすることで、補完をしています。

カナイセイジ氏は、日本で最も有名なボードゲームデザイナーですが、街頭インタビューをしても、カナイセイジ氏を知っている人は10人に1人もいないことでしょう。

一方で、中田氏は、タレントやお笑い芸人として決してトップに出てくる人ではありませんが、該当インタビューをすれば多くの人が知っている有名人。外側は「中田敦彦」中身は「カナイセイジ」は、ある意味完璧な組み合わせなのかもしれません。

「自分が持っていない技能はあえて持とうとせず外部リソースを使って勝つ」という作戦は、PERFECT HUMANで「『歌えない』『踊れない』のに紅白に出場」という偉業を成し遂げた際の戦略にも通じるものがありますね。

これは売れるかも?!カードゲーム「XENO」の特色。

ここでカードゲーム「XENO」の特徴をおさえておきましょう。XENOのカードゲームとしての特徴は、簡単に言えば以下の3点です。

  • 美麗なカードデザインと独自の世界観
  • 価格が700円と激安
  • ベースは不朽の名作「ラブレター」

換言すれば「手に取りやすい見た目と価格で、遊んでも面白い」というわけです。これで売れなきゃおかしいと思えるスペックです。

美麗なデザインと独自の世界観

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XENOでまず目を惹くのは美麗なデザインです。

アナログゲームで最もメジャーなドイツゲームでは、数字のみのカードなど、見た目よりゲームシステム重視のものが多いですが、それとは一線を画しています。

昨今のスマホゲームを見ればわかるとおり、ライトユーザーに受けるにはまずは見た目がかなり大事。遊んだことがない人に対して、カッコいいデザインとXENOの独自の世界観はなかなか魅力的です。

700円という破格の値段

XENOの価格は税抜き700円。しかしながら作りは、決して手を抜いているわけではないので、破格の値段といえるでしょう。

一般的な小箱カードゲームの価格は1500円〜2000円です。しかしながら、UNOやトランプしか知らない一般消費者をターゲットにすると、UNOやトランプより大幅に高い価格では手にとってもらえません。一般への普及のハードルを下げるため、利益度外視で価格設定をしているようです。

日本が誇る名作「ラブレター」がベースで面白さも折り紙つき

いくら見た目がよくて安くても、面白くなければ意味がありません。XENOのベースは日本発の大ヒットカードゲーム「ラブレター」。ゲームとしての魅力も十二分です。
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「ラブレター」は人気作品ということもあり、「おそ松さん」など、デザインを変えた別バージョンがこれまでいくつも作成されました。

XENOはラブレターのルール自体を改変した亜種の位置付けです。すでに完成された作品を修正するのはリスクが大きいですが、「オリラジ中田考案」を前面に出すには、見た目だけではないオリジナリティも必要なわけです。

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組織のなかで頂点をめざすのではなく「自分の持てる武器をどう使っていくか」の生き方

以上のように、中田氏のカードゲーム制作は、知名度と資金力というライバルが真似できない武器を使い、アナログゲームのブルーオーシャン市場を開拓する戦略と評価できます。

芸人のキャリアパスと中田氏の活動

お笑い芸人の王道のキャリアは以下のようなもの。コントや漫才などのネタは飽きられるため、人気のあるうちに次のステージ進むことが求められます。

  1. お笑い番組で人気と知名度を獲得
  2. ひな段芸人やレポーター、クイズ回答者としての出演でテレビでの存在を確立
  3. 冠番組をもちMCやキャスターで活躍、ドラマに出演

お笑いでブレイクするのはかなりのハードル。さらに一言二言しか発言できないひな壇で頭角を現すのも至難の技でしょう。地位を確立しても、成り上がる後輩に追われる身。常にトップランナーとして走り続けなければなりません。

オリラジも、冠番組をもつ売れっ子から落ち目になっていた時代もありました。

その後人気は復活しましたが、王道のキャリアではなく、最近は物販やオンラインサロンに重点をおいてテレビから軸足を外しつつあるかのようにも見受けられます。

そんな姿に「芸人なんだから副業ではなくお笑いで天下をとれよ」「金になるなら節操ないのか」などの批判も。

しかしながら、そんな批判は効き目がありません。そもそも彼にとってはお笑いは極めるべき芸の道ではなく単なるビジネス。アパレルもビジネス、音楽もビジネス。今回のカードゲームもビジネスです。

いまの仕事を極めたいからでも、好きで愛着があるからでももなく、ビジネスとして勝てるから参加しているわけですね。

そんなビジネスライクな活動に、お笑いやボードゲームを愛する人の中には当然嫌悪感を抱いてしまう人もいるかと思いますが、世の中「売れれば勝ち」の側面

XENOはホームランとなるか。ホームランが打てるスイングをしたい。

この記事を書いている現在、AmazonでXENOは売り切れになっています。実はこれもマーケティングのための戦略かも。

というのも、Perfect Humanで紅白出場を狙った際には、「飽きさせないように」と、メディアへの露出度合いを控え「気になる状態」を継続する取り組みをしてきたようです。なので、XENOも売り切れで希少性からの物欲刺激を狙うのも十分ありえます。

今回のプロジェクトが本当に成功するかはわかりませんし、全くの空振りに終わるかもしれません。しかしながら、綿密な戦略に裏付けられたホームランを狙えるスイングとはいえるでしょう。

吉本事件でも明かになりましたが、「お笑いだけで生きていける保証もなければ事務所も守ってくれない」。そんななかで、厳しい王道を歩むのではなく、新たな道を追求しているわけですね。

労働2.0 やりたいことして、食べていく

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ひるがえると、私のようなサラリーマンも似たようなもの。いくら頑張っても会社で役員になれるのは一握り。そこには努力や実力だけではなく、ときには運やコネも必要となる世界です。

終身雇用の保証もない時代。組織にしがみついて勝ち目の薄いレースをするよりも、自分が持っている武器を活用できてライバルが少ないフィールドを見つける観点も大事なのかもしれません。

株の格言に「人の行く裏に道あり花の山」という言葉がありますが、これを体現するかのようなあえて王道から外れるオリラジ中田氏の生き方。今回のXENOの発売を通じて、成功する人は自分の仕事や組織に固執しないドライなビジネスセンスをもっているんだなと改めて思いました。

中田さんの実業家としての着眼点には、つくづくすごいなと思うばかり。ただし、私自身は信者になって貢ぐ気はありませんが。

カードゲームXENO。販促品のような位置づけで良質なのに格安価格。コスパはよいので売り切れでなければ手に入れておくとといいですよ。